FALLEN TREE倒木防止対策・地下支柱

都市部ならではの緑豊かな景観形成を図る上で、車両や歩行者の交通の安全性や利便性を確保することは必要不可欠です。中高木を新植する際は、樹木の活着を助け、倒れないように支柱を取り付ける必要がありますが、土壌環境や支柱の選択次第では、倒木・枯死を引き起こす可能性があります。

設計段階では、周辺埋設物の有無や地下躯体、側溝、植え穴の大きさなどの物理的な問題と、植栽用土壌の成分や現地の水はけなど植栽基盤の問題を事前に調査し、予防措置をとることが有効です。また、活着後の健全な生育や安全性への担保など経年変化にも配慮した計画が必要です。

景観性と安全性を備えた支柱を選ぶ

現場に搬入されたケヤキの根鉢。根が伸び活着するまでの間支柱が必要。移植された樹木は、十分に根が伸びておらず、自らの樹体を支えられない為、根が伸び活着するまで転倒防止として「支柱」を設置します。都市部では、人工地盤や傾斜地、小さな植栽桝など特殊な場面でもしっかりと支えることができる機能性と、景観性、空間利用に合わせた支柱材選びが重要です。

樹木を地下で支える地下支柱は、樹木のシルエットや建築デザインを生かした、自由度の高い空間設計を可能にします。支柱本来の目的である転倒防止のためには、「根鉢を安全に支える」技術と、根が伸び活着するための「樹木を生育させる技術」を備えた地下支柱を使用することが重要だと考えます。樹木の規格や用途に合わせた地下支柱の適切な選び方や構造についてご紹介いたします。

根鉢を安全に支え、早期活着させるためのポイント

経年で掘り起こした根元。
地下支柱の根に与える影響が少ないことがわかる。

樹木は養分や水分などを吸収するために根を出します。特に細かい根はその吸収量が多く、樹木の活着に大きな影響があります。早期に活着させるためには、発根した細根を切らないよう樹木(根鉢)をしっかりと固定する必要があります。ただし強度を優先することで発根を阻害しないよう、生長し続けることを考えた固定方法を選ぶことが重要です。

①根鉢や植物の根を損傷しないこと
初期移動や根鉢のくずれがないよう、面でしっかりと支え、根の健全な生育を阻害しないものとします。
②ベルトによる首絞めをしないこと(生育阻害要因の除去)
樹木の生育過程で固定ベルトが幹に食い込むことを防ぐため、食い込み確認・切断メンテナンスを行います。または一定期間強度を保ち、やがて分解する生分解性幹巻ベルトの使用を検討します。
③根鉢を回転させないこと(傾き防止)
強風時に根鉢が回転して傾斜しないよう根鉢の回転防止を備えます。

地下支柱選びのポイント

土中へ抵抗板(アンカー)を打ち込むことで、内部摩擦角による荷重抵抗を利用し樹木を支えます。横打ち式と縦打ち式があり、設置環境に応じて使い分けます。設計段階では、樹木規格と地下支柱を使用する場所の状況を確認し、アンカーの打ち込み方向を決定します。

樹木規格の確認 ①樹高 ②目通り幹周 ③根鉢サイズ
使用場所の確認 ①周辺埋設物の有無 ②地下躯体 ③側溝 ④敷地境界

早期活着を促す植栽基盤づくり

支柱により植栽初期の倒木を防ぐとともに、目標とする将来樹形に早く健全に生育させるための、植栽基盤づくりを行います。樹木の早期活着・生育には、地下でしっかりと根を張らせるための周辺客土の質や、根系伸長域(根の広がり)を確保することが重要です。

倒木のリスクを減らし、支柱に頼らない樹木にするためには、樹木を早く健全に自立させるための植栽基盤整備計画が必要です。地下支柱と合わせて早期活着を目指す植栽基盤づくりをご提案いたします。

さいたま新都心の辻広場である「けやきひろば」。人工地盤上に樹高8.0mのケヤキを植栽するため、地下支柱を採用し、強度補強の工夫がなされています。

狭小な植穴に植えざるを得ない場合

改良ポイント

樹木に見合った土量・土厚が確保されていない。

根系を広げる土量や土厚の確保ができない場合は、植穴外周の路床部を生かします。路床部に根が自由に生長できるスペースを確保する根系誘導耐圧基盤(パワーミックス)を設置します。

現場発生土や不良客土を使用する可能性がある場合

改良ポイント

建築物の外構緑化ではセメントガラが混じり、
アルカリ性障害をおこす可能性が高い。

客土の性質に合わせて物理性、化学性および微生物性を考慮した改良を行います。外構植栽用として購入客土がよく利用されます。購入土は良質とはいえ性質は様々です。さらに重機による転圧やセメント害の影響を受ける可能性があります。物理性改良では無機系の土壌改良材を投入し、土壌構造(透水性・通気性・保水力)の改善を行います。化学性改良では有機物を投入することで地力の向上と維持を図ります。

大まかな土壌分類と混合用改良資材早見表

オールインワン
(鉱物繊維改良材)
コロボクル
(高有機土壌活力肥料)
A・Gロック
(流紋岩パーライト)
エコ炭(再生炭)*
砂質系土壌 15% 5%
粘質系土壌 10% 10%
中間系 10% 10%

根系誘導耐圧基盤 参考断面図

土壌改良材の混合
黄色枠 植穴底面での排水と通気性確保
青枠 活着性の向上(根付き良好)