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- [第六回] 地震に強く、安全で安心な防災芝生広場造成に関する提案
GUIDE土の専門家から緊急提言「グリーンインフラを用いた防災・減災対策」(全6回連載)
第六回 地震に強く、安全で安心な防災芝生広場造成に関する提案
1. 芝生広場は、安全で緑豊かな環境に
2011年の東日本大震災では、各地の埋立地で大規模な液状化現象が見られました。千葉県浦安市内の埋立地でも、至るところで大規模な液状化による噴砂が発生しました。この噴砂は、ダスト舗装や平板舗装を施工した広場に顕著で(写真1.2)、芝生広場においてはそれほどではなかった(写真3.4)という事実がありました。
ダスト舗装や平版などの人工構造物で液状化の発生しやすい埋立地表面を覆うことは、基盤の揺れに柔軟に対応できないため、地震で破壊された箇所に噴砂が現れたものと考えられます。その頻度は、芝生広場における噴砂箇所が僅かだったことに比べるならば、その量が格段に多かったことが調査により明らかになりました。
芝生地の噴砂の特徴は、芝生の生育が悪い箇所、部分的な凹地などから発生していました。言い換えれば、芝生の根系発達が不十分な箇所に噴砂したものと考えられます。芝生地内の樹木を支える支柱の杭が、表土層を貫き埋め立て基盤に到達している箇所では、噴砂は杭に沿って発生していました。このようなことから、植栽基盤が根系により補強された箇所では、噴砂を抑制する効果があったものと考えられます。従って、良好に芝生根系が伸長できる植栽基盤の造成は、景観のみならず安全な環境の創造にもつながるものと考えられます。
芝生の根系は通常、植栽基盤の下層(20cm~30cm)に伸長します。また、地表を這って横に延びる「ほふく茎」も発達させて地表全体を覆っていきます。芝生の生育が良好な広場では、それらの根が強く絡まり合って埋め立て造成地の上を覆い、ジオテキスタイルにも似た補強効果を発揮したものと考えられます。従って、防災に効果を発揮できる芝生広場の造成は、いかに根系を深く、横に力強く張ることができる植栽基盤を造成できるかがカギとなります。
また、公園は地域住民にとって、生命を守る安全な避難場所であるべきです。避難した時に、もし亀裂が入っていたり噴砂が至るところで発生するならば、そこは安全な避難場所とはいえません。また、液状化が発生していなくても、降雨などで排水が悪くすぐに使用できないことは、避難広場としての適格性を欠くことになります。降雨後は速やかに排水できて、表面に水が浮かない基盤造成も必要です。
2.芝生基盤造成の新技術「グラスミックス工法」
そこで、芝生用植栽基盤が経年の踏圧や車両の通行による転圧でも締め固められ沈下することなく、透水性能を損ず、芝生の良好な根系発達が担保できる「グラスミックス工法」の使用を提案します。
「グラスミックス工法」とは、大豆程度の小粒の単粒度火山砂利をかみ合わせて基盤構造を創り、その隙間に詰め込んだ「生育助材」によって芝生の根を早期に広く発達させようとする芝生基盤造成工法です(図1)。
3. 「グラスミックス工法」の造成方法と、そのメリット
一般的な芝生用植栽基盤の造成では、できるだけ転圧をかけず柔らかな生育基盤を造成した上に芝張りして、その後も過度の踏圧を受けないように使用するのが普通です。しかし、この「グラスミックス工法」は、施工当初からローラーなどで転圧をしっかりと行い、基盤を締め固めることから始めます。これは、芝生基盤として単粒度骨材を用いるためで、骨材同士をしっかりとかみ合わせて基盤を造成することが重要なポイントとなるからです。これにより隙間が確保でき、そこに芝生根系が伸長する事となります。
芝張り後は一定の養生期間を経て芝生が生育すれば、踏圧が原因で植栽基盤が沈下、固結することはありません。また、仮に芝生が歩行で擦り切れても、植栽基盤に深く入った根系による早期の再生が可能です。また、液状化による噴砂に対しても抵抗性の高い芝生が造成できます。以下写真5.6に造成方法と完成した状態を示します。
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