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- [第十回]アルカリの新改良工法を開発
GUIDE樹木医による「土壌のアルカリ化問題」早わかりガイド(全12回連載)
2007年執筆
第十回「アルカリの新改良工法を開発」
アルカリ化した現場発生土を植栽に適した土壌に改良するには、化学的にpHを下げ、良質な有機物を混合することが重要となる。有機物には緩衝能があり、高pH土壌の改良には有効な手段ではあるが、20%程度混入した後pHを測定してもそれほどは下がらない。その点、現実の改良場面では納得性が少ない。そのため、どうしても化学的な改良方法と併用する必要が出てきた。
公共工事では特にpHの基準値設定は厳しい。それは、改良法が正しかったかどうかを判定するための目安となるからである。
国土交通省では「建築工事監理指針、平成16年版」には、「pH値が8.0を大きく超える場合は、・・・・中和剤を使用することが多い」と記され下限数値を明確にしている。(社)日本道路協会では「道路緑化技術基準・同解説」において、「pH(H2O)4.5以上8.0以下、電気伝導度(EC)1.0dS/m(デシジーメンス)以下であればよい」と範囲を指定して改良基準が決められている。さらに、排水基準も厳しい。
総理府令第35号別表第2「水質汚濁防止法排水基準」によれば、「海域以外に排水する場合は、pH5.8以上8.6以下」とされていて、普段セメント安定改良などを施工した直後の数ヶ月は、おそらくpH9.0~10.0近い排水が河川に流れ込んでいる現実もあり、今後は注意が必要となる。その他の自治体でも独自で基準が設定され始めていて、pHを取り巻く環境は厳しくなりつつある。
アルカリ土壌とはpHいくらからかは、それぞれによって考え方が違う。
(社)日本造園学会の「緑化事業における植栽基盤整備マニュアル(2000)」では、pH8.0以上を評価因子・分級で「不良」としている。EC値に関しては、「不良=改良可能な土壌」として0.5 ~1.5 dS/mという表現があり、1.5 dS/mを上限としてみることができる。
U.S.Soil.Survey Stuff が示すアルカリ土壌の判定基準はpH 8.5以上であるが、ESP(Exchange Sodium Percentage) が15%以上と定めていて、基準はむしろ塩類土壌に重きが置かれている。その他の資料などを考慮すれば、一般的な植栽においては植物根への影響は「pH8.0以下、EC値は1.5mS/cm以下」を改良目標とするべきであろう。
新しく化学的pH中和剤として開発できたのが、リン酸系資材である。「アルカリメイト」と命名した。リン酸はこれまでの硫酸のように土中で激しく反応することはなく、化学的には安定性が高い。リン酸塩は土中で形を変えながらその都度リン酸を放出し、アルカリを中和していく。
化学的な中和ということは、放出されたリン酸によって、塩と水を生成することである。土中で形を変えたリン酸水素カルシウムは、同じく土中に多いフッ素と化合して無害のアパタイトに変化して不溶化してしまう。アパタイトは全く無害な物質であることから、リン酸による改良は非常に安全で、かつ効果的な改良方法であるといえる。
過去、硫酸系のpH改良剤はECが上昇して使いづらかった。このリン酸系資材はほとんどECの上昇がないのも特徴である。ただ、改良前からEC値が高い土壌を下げる効果はないので注意が必要である。